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受託研究等に係る経過措置2/4(受託研究等)

ファイル 19-1.pdf

①経過措置適用の有無の検討
 受託研究等は目的物の引渡しを要しません。これに関し、国税庁の経過措置の取扱いQ&A 問26において、以下のように規定されています。

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 例えば、運送、設計、測量などで、その約した役務の全部の完了が一括して
行われることとされているものは、「仕事の目的物の引渡しが一括して行われ
ること」の要件を満たすこととなります。
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 受託研究については、研究成果の報告が義務づけられている場合が一般的と想定され、したがって、その報告をもって「約した役務の提供が一括でなされる」と判断できると思われます。
 したがって、「指定日前(平成26年9月まで)の契約」という適用要件を満たしたものについては経過措置が適用され、全額が旧税率での課税となります。
 要件を満たさない場合には、その完了の時期における税率によるため、期間が施行日(26年4月1日)以後の場合、その全額について新税率が適用されます。

 また、随時役務提供がなされ、一括して引き渡しがなされないと判断される場合は、経過措置の適用はなく、26年3月までの収益には旧税率、4月以降の収益には新税率の消費税率を適用することになります。

 ②具体的な処理
 会計上の収益化の時期に係らず、役務提供完了の時点において、経過措置適用分は消費税率5%、それ以外は消費税率8%の課税売上を認識することとなります。

(上部の添付ファイルをご参照ください)

 あくまで契約と完了の時期により税率が確定するため、入金の時期等は税率には影響しません。たとえば、添付ファイルに示したケース4で、26年3月までの分と26円4月以降の分としてそれぞれ別々に入金がなされたとしても、「一括して引き渡しがなされる」という要件を満たす限り、全額が消費税率8%適用となります(注) 。

③契約税率と適用税率
 消費税率は資産の譲渡等の時期(経過措置適用の場合はその要件を満たすか否か)により一義的に決定されます。
 したがって、たとえば仮に契約書ないし請求書記載の税率(あるいは税額)が5%であったとしても、消費税法上適用される税率が8%と判断される場合もあります。
 その場合は、契約書等に記載の金額は、消費税申告上は税込で値決めをしたものとして見なされ、本体価額と消費税額は法律上適用される率で適宜区分されることになります(税込105円で契約し、その内訳は本体98円、消費税7円として扱われるということです)。

④値増し等の可否
 ③の例のように、5%で契約したにもかかわらず、消費税法上8%が適用される場合において、差額の3%を巡って、消費税転嫁対策特別措置法の活用が考えられるところです。
 しかし、残念ながら大学法人等の場合は資本金3億円を超えている場合が大半であると思われ、「規制により保護される者」には該当しないことから、同法により差額の3%分の支払いを当然に受ける、というわけではありません。
 あくまでも、相手方と交渉の上、契約変更等により請求するしか方法はありません。
 なお、このような事態を想定し、契約書上、本体金額のみ明示し、「業務完了時点に施行されている消費税法に基づく率で消費税を請求する」旨の規定を入れる、あるいは、契約時点の税率で契約したうえで、「消費税率が改訂された場合は、改訂による差額を精算する」などの規定を盛り込んでおくなどの対応策の検討も必要ではないかと思われます。
 また、値増しはあくまでも当事者間の問題ですので、たとえ100円+5円で契約した場合であっても、法人側で7円を納税することをいとわなければ、(税務上は)契約変更等をする義務はありません。

 ⑤その他
 (特に民間の)相手方に「受託研究は一括役務提供完了のため経過措置適用対象」である旨通知しておくと、不要なトラブルを未然に回避できると思われます。


(注)受託研究で、包括契約を複数年で交わしたうえで、具体的な個別契約を年度ごとに締結するケースが存在しますが、その場合は、個別の契約の期間ごとに役務提供がなされるケースが通常と思われ、その場合には、8%引上げの際は、25年度の個別契約分は5%、26年度の個別契約は指定日前の契約であれば5%、指定日以降の契約であれば8%が適用されます。
 また、JST(独立行政法人科学技術振興機構)との受託契約(復興促進プログラム 他)については、複数年契約であっても、各年度単位で報告等を求めており、その都度反対給付がなされるという整理に基づき、年度単位で適用税率を判断する取扱いとなっており(平成26年3月19日付JSTからの事務連絡)、役務提供が一括してなされるか否か、提供のタイミングがいつであるかを見極めたうえで適用税率を判断する必要があります。